ちくま文庫
¥760-

なぎら健壱
下町小僧 2002.4.13記

下町はダウンタウンではないと思う。下町はただ単に場所の位置を差すものではなくその土地に住む人の気質やその土地の空気をも巻き込んでの言葉のように思える。
「木挽町」、東銀座の一角の旧地名で「こびきちょう」と読む。おそらく関東以外の人には全く縁のない地名であろう。
この木挽町に「萬福」という老舗のラーメン屋さんがある。鰹だし醤油味の中華そば屋でいわゆる支那そば屋だ。この店の横路地を入ったところに「下町小僧」の作者、なぎら健壱さんの生家があったらしい。今でこそ東銀座として一括りされているが、その昔は木挽町界隈も下町テイストに溢れていたようだ。
テレビ東京系列で放送の「アド街ック天国」で下町が取り上げられると、そのほとんどになぎら健壱さんはパネラーとして名前を連ねている。今では、昔の過激フォークシンガーとしての顔よりも下町おじさんとして有名になってしまった。
そんななぎら健壱さんが下町の気配や気質を残しておきたいという思いで書き留めたのが「下町小僧」だ。下町の気配や気質は土地開発によってほぼ消滅しかかっているのが21世紀の現状だ。おそらく記憶の中でしか下町は残らないのかもしれない。しかし、この本は完全に下町が記録として残されている。そして将来的に下町の記憶の道標として残りえる本になることだろう。

目次:

前書きにかえて

銀座生まれ
食べ物の思い出1−蕎麦
銀座の思い出(1)
おもちゃ三種の神器
銀座の思い出(2)
食べ物の思い出2−ブルーチーズ
月光仮面
食べ物の思い出3−スパゲッティ・ミートソース
縁日
銭湯
食べ物の思い出4−即席食品
カタ屋
少年探偵団
食べ物の思い出5−コカコーラ
葛飾新宿
食べ物の思い出6−コッペパン
葛飾の思い出
紙芝居屋
食べ物の思い出7−給食
貸本屋
子供の賭事
   ベーゴマ
   メンコ
   ビーダマ
食べ物の思い出8−肝油ドロップ
駄菓子屋
物を使った遊び
銀玉鉄砲
2B弾
ボルト・ナット爆弾
貝割
土団子
食べ物の思い出9−流しの食べ物屋
欺瞞的な物売り(1)
食べ物の思い出10−もんじゃ焼き
欺瞞的な物売り(2)
ブーム
   切手
   西部劇ブーム
   忍者ブーム
   マジックヨーヨーブーム
祭り
ブラウン管のヒーロー達
   赤胴鈴之助
   月光仮面
   怪人20面相
   あんみつ姫
   遊星王子
   ジャガーの目
   風小僧
   まぼろし探偵
   少年ジェット
   海底人8823
   白馬童子
   怪傑ハリマオ
   矢車剣之助
   鉄腕アトム
   鉄人28号
   七色仮面
   アラーの使者
   ナショナルキッド
   ふしぎな少年
   少年ケニヤ
   隠密剣士
   鉄腕アトム(アニメ)
   鉄人28号(アニメ)
   チャンピョン太
   エイトマン
   忍者部隊月光

あとがき

文庫版あとがき

解説 タイム・トラヴェラーなぎら健壱 鹿島茂


目次の項目を読まれていかがだろうか。懐かしい気持ちになられた方はおそらく昭和20年代、30年代生まれの一部の方ではないだろうか。過去を振り返ってばかりいることをお薦めはしないが、たまにはご自身の幼き日の気配を思い出してみるのも良いかもしれない。
世には「癒し系」なる言葉が存在するが、お疲れの皆さんにとってはまさに「癒し系」の一冊だと思う。


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