あずみ ネタばれ度:★☆☆ 2003.6.7記

ビッグコミック・スペリオールで連載中の漫画『あずみ』の映画化だ。去年、映画化されると聞いた時、あずみを上戸彩というアイドルらしき子が演じるということも相まって、ダメな映画だろうなと全く無視を決め込んでいた。
しかし、映画公開に先んじてのプロモーションに見事に洗脳されて、公開されたらかなり気になる映画となってしまった。そして、ついに映画館に足を運んだ。

面白かった。かなり。
期待していなかったから面白かったのかもしれない。と言ってしまうと制作者に失礼になってしまうかなと思うほどエンターテイメントとして面白かった。この面白かったのは脚本のせいか監督のせいなのかと問うてみると恐らくは監督の手腕によるところではないだろうか。監督の北村龍平という人は1969年生まれということだから監督しては若い世代のほうに入るのだろう。彼の他の作品は見たことないが、この『あずみ』が代表作になることだけはまず間違いないだろう。
つまらない映画の大半は監督の自己満足でしかないことが見え見えだ。自己満足ゆえにフィルムを短くカットすることができない。日本映画が意味もなく長尺なのは名監督が少ない所以でもあるだろう。『あずみ』も上映時間が2時間22分と聞いていたので、同様の心配を持って見ていたが、その危惧は無用のものだった。北村監督の優れているところは、編集の段階でどうにかなるだろうという思いで無駄なフィルムを回していない点なのではないだろうか。この監督は、撮影の段階で概ねどのような仕上がりになるかを想定して撮影に臨んでいるような気がしてならない。それほど、綿密に練られた映画のように思えた。

そして映画『あずみ』が面白かった点は、あずみが敵対するいわゆる悪役のキャラクターが際立って魅力的なところだ。この点は、原作の小山ゆうの力なのかもしれない。オダギリ・ジョー演じるところの最上美女丸や狂気の佐敷三兄弟などは見ていて鳥肌が立つほど魅力的だ。なぜか評価が高い『マトリックス』の敵役など足元にも及ばないほど魅力的な悪役達である。
登場人物のコスチュームも古い言い方をすれば「パンク」ぽくて面白い。これは悪役に限らずあずみの仲間たちにもいえることだ。時代劇ながら近未来的な香りさえ漂ってきそうな気持ちのいい違和感を感じることができたのも面白かった。
唯一残念なのは、数少ない女性出演者である、やえ役の岡本綾、彼女は存在感もなく演技力もない。なぜ出ていたのか全く不明である。関係者のしがらみとしか考えられない。
その点、主役のあずみ役の上戸彩はずいぶん頑張ったのだろうなという部分があちこちに見られた。原作のあずみの「異国の血」を持つハーフ的なイメージはまったくないものの、映画版あずみを見事に確立していたと言っていいだろう。

映画の宣伝で盛んに言われていた「あずみの200人斬り」はまさに監督の独演場で、今まで見たこともないカメラワーク、CGであろう映像処理、など漫画独特の仮想空間を実写で見せてくれるので非常に面白いものだった。
出演している若い子たちの容姿も昔の日本人のそれとは違って日本人離れしているし、映像監督の資質も昔に比べて明らかに向上しているのだろう。巨匠と呼ばれる監督のスタイルはもう必要ないのかもしれない。
ストーリーの流れから、パート2の制作はまず間違いないと言っていいだろう。そう言えば音楽も全く印象に残っていないから恐らく付け足しでしかなかったのだろう。この点も残念かもしれない。
この『あずみ』はアメリカ人にもウケそうだが、アメリカ公開の話はないのだろうか。何はともあれ、上質のエンターテイメント邦画を見せてもらった。と言いつつも売店でパンフレットを買う際にちょっと恥ずかしかったのはアイドル出演映画ということへの偏見なのだろうか。


2003年作品。上映時間:142分。

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