イルマーレ ネタばれ度:★★☆ 2002.4.27記

韓国映画だ。ビデオ屋で借りて見たが、実は『リメンバー・ミー』という映画とどっちがどっちか分からなくて間違って借りたようなもんだった。
何で間違えるかといえば、どちらも同じ頃に公開され、どちらも内容は時間軸のゆがみをテーマにしたものだったからだ。『リメンバー・ミー』は20年の時間差で一組の男女を描いた作品で、こちらの『イルマーレ』は2年の時間差での男女の物語だ。

ミステリーの2大ルール違反として「双子」と「精神異常」という設定があげられる。『イルマーレ』はミステリーではないが「時間軸のズレ」というのもルール違反になるのではないだろうか。タイムトラベル・・・物質文化がここまで発展して不可能などないといっても過言ではない時代において人類に残された数少ないロマンは宇宙旅行とタイムトラベルではないだろうか。
だからタイムトラベルをテーマにした映画や小説には評価がついつい甘くなってしまう。タイムトラベルをテーマにした映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ペギースーの結婚』を始め、邦画でも『未来の思い出』『時空(とき)の旅人』などがある。これらの映画で共通する課題は時間軸の中での自分との出会いや知人との出会いがあげられる。この最大のジレンマをどのように解決していくかがタイムトラベルをテーマにした映画の好き嫌いにつながるように思える。
『イルマーレ』においてもこの時間軸のジレンマをどのように受け止めるかが好き嫌いのポイントになるだろう。幸い私は、うまく自分なりに受け止めることができたので好意的な評価をすることになった。

1999年のクリスマスも近い12月、チョン ジヒョン演じるキム ウンジュは住み慣れた海辺の家イルマーレを離れソウル市内に引っ越す。ウンジュにはアメリカ留学中の遠距離恋愛中の恋人がいるが連絡がとれないこともあり彼からの連絡を待つ身でもある。引越しをした後に恋人からの手紙が届くかもしれないという淡い期待を込めて、イルマーレに次に住むであろう住人に宛てて置手紙を郵便受けに入れ伝言をする。内容は、大事な手紙が来たら新しい住所に送って欲しい、と。文末には1999年12月21日の日付を記して。

イルマーレの次なる住人は大学の建築学部に在籍しながらも何故か設計には興味を示さず工事現場で働くイ ジョンジェ演じるハン ソンヒョンだった。当然、彼は郵便受けに置かれているウンジュからの手紙に気付くが読んでもあまりピンとこない。何故なら彼こそがイルマーレの最初の住人であり、しかも彼の「今」は1997年の12月だったから。

この2人の時間軸は2年のズレが生じていることになる。郵便受けというタイムマシーンを通じて2人の奇妙な文通が始まる。最初、2人はお互いの時間軸のズレに関して疑問を持つが、興味が先立ち「ありえない」という常識を無視して文通による交際を深めていく。
タイムトラベラーものの見せどころは時間軸の違う2人をどのようにして遭遇させるかだ。この映画でもそのあたりは面白おかしく描かれている。だいたいの場合は、過去に住む彼ソンヒョンが過去の時代の彼女のウンジュの前に現れる。しかし、過去のウンジュはまだソンヒョンを知らないわけで、彼の存在は周りの通行人や景色となんら変わらない。
そんな2人が初めて未来の時間で会う約束をする。2000年3月済州道のとある地で。ウンジュは待つが過去に住むソンヒョンは現れなかった。何で現れなかったのか?ウンジュはソンヒョンに手紙を書くが、過去の時間に住むソンヒョンには何故、未来の自分がウンジュとの約束を破ったのか考えもつかない。
そして、物語は2人にとって決定的な事件が起きたある時間へと進み、その時に起きた事実を受け止めることになる。

時間軸を超えての遭遇は見る側に相当なジレンマを与える。映画内で起きている事柄をたえず「これでいいの?」「今、どうなっているということ?」と考えながら見続けることになる。
当然、矛盾点も多いわけで、最初に書いたが、この点を許容できる要素を映画持っているかどうかが評価の最大の分かれ目になるのだと思う。私は、許容範囲だったのでついつい好意的な見方をしてしまう。しかし、その好意的な見方をすることに何の嫌悪感を持たないぐらい素敵な映画に仕上がっていると自分では思っている。
この映画の監督はイ ヒョンスンという人でこの映画が3作目らしい。残念ながら他の作品を見る機会は得ていない。韓国での公開は2000年で『JSA』と同時期の公開で苦戦を予想されたがそこそこのヒットを記録したようだ。

最後に、イルマーレというのはイタリア語で「海」の意味らしい。海辺にたたずむ家イルマーレ、モダンな建築で最初に画面に登場した時は違和感があった。まず、この家の配管などどのようになっているのだろうかと現実的なことを考えてしまった。
しかし、映画を見終わった時は、この家こそがこの映画の通行手形の役目をはたしていたのでがないかと思うようになった。
イルマーレは潮の満ち干によって海上の家であったり、地上の家であったりと2つの顔を持っている。この2つの顔こそがこの映画の時間のズレた世界に住む2人の象徴のようにも思えた。
そして何よりも、このような家は現実に成立するはずありません。だからこの映画はあくまでも夢の中の世界として見てください。というイルマーレから、そして監督からのメッセージのようにも思えた。何でもない映画だったが、心地よい時間を過ごせた好きな映画のひとつに加えたい。

2000年、97分。


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