ワン・フロム・ザ・ハート ネタばれ度:★★☆ 2002.7.13記

『ムーランルージュ』は映画館で見ていなかったのでビデオで見た。テレビ・スポットを見る限り『ワン・フロム・ザ・ハート』を派手にした映画なのだろうなと思っていた。しかし、それは間違いでずいぶんショボイ映画だった。きらびやかさをもっと期待していたがそれも裏切られた気がした。
そして思ったのが『ワン・フロム・ザ・ハート』をまた見たいだった。恐らくビデオ化されていない(過去にはされていた)と思うので、この見たいという衝動はまさにない物ねだり以外の何ものでもない。

この『ワン・フロム・ザ・ハート』はフランシス・コッポラ監督の82年作品であることは案外知られていなかったりする。興行的には失敗作だったようで日本でもあまり話題にならなかったと思う。私も見たのは映画館ではなくレーザー・ディスクだった。
映画は青い緞帳が開くところから始まるので映画館では本物の緞帳で映画が始まり、映画の中でまた緞帳が開いて物語がスタートするという始まり方だ。この映画のスゴイところは全てがスタジオのセットで、ロケ・シーンが全くないところだ。

物語の舞台はエンターテイメントの本場ラスベガス。同棲5年目の男女2人がそれぞれお互いに相手に対して不満を持っている。同棲にも疑問を持ちながらも結婚という安定も良いかもしれないと考えながら生活しているという全く平凡な話だ。
その男女を演じるのもハンク役のフレデリック・フォレストとフラニー役のテリー・ガーというこれまた地味めな2人。その2人の今の生活に更に疑問をもたらし、新しい人生の可能性をも夢見させるのがナスターシャ・キンスキー(ライラ)とラウル・ジュリア(レイ)。この2人に主役の2人よりも存在感を持たせたあたりも、主役の2人がいかに平凡であるかを見せるためのキャスティングなのかもしれない。
ナスターシャ・キンスキーは当時、この映画の他に『テス』『今のままでいて』『キャット・ピープル』などに出演しているが、この映画が一番魅力的だった。サーカスのヒロイン的な役で玉乗り、綱渡りなど実際に自分が演じていたが、濃い目のメイクで映えた大きな目と唇はとても魅力的だった。
ロケなしのオール・セットだが圧巻はラスベガスのメイン・ストリートで繰り広げられる路上ダンス・パーティーのシーンだ。そのお金がかかったであろうセットの豪華さとあまりにも多いエキストラの数に驚かされる。聞いた話では後ろのほうで見えないエキストラの動きもちゃんと決められていたそうだ。

物語は同棲を解消して旅に出るフラニーを引き止めようとするハンクの思いがフラニー届くかどうかというのが最後の盛り上がりになるだけの単調なものだ。しかし、雨上がりのラスベガスのシーンや遠くにラスベガスの街を見る郊外のシーン、空港で飛行機が離陸しながらその機体を見せるシーンなど印象深いシーンが多い。
そして何よりもこの映画の最大の主役は出演者でもなんでもなく、実は映画の中のシーンを歌の歌詞で導いていくトム・ウェイツクリスタル・ゲイルかもしれない。それほど、この2人の歌は素晴らしく、この映画のサントラは私の愛聴盤でもある。特にオープニングと映画のタイトル曲、そして映画のラストで流れてくるクリスタル・ゲイルの「TAKE ME HOME」はこの映画の静かな感動を最大限に盛り上げてくれる。

この映画は見る機会はもしかして少ないのかもしれない。そしてサントラを手に入れることは更に難しいかもしれない。街のどこかで見かけたなら、どちらを先に手にしてももう片方が欲しくなるは確実だと思う。
『ムーランルージュ』を見て感動した人も私のようにガッカリした人にも機会があればこの映画『ワン・フロム・ザ・ハート』は見て欲しいし、お奨めしたい。

1982年作品、107分。


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