ファントム・オブ・パラダイス ネタばれ度:★☆☆ 2001.8.4記

最近の映画はほとんどがビデオ化されているようだが、70年代、80年代の名画とされているものの中で何故かビデオ化されていないものがいくつもある。
私のお気に入りの『ファントム・オブ・パラダイス』もビデオ化されてた時期もあったようだがその後、廃盤となった。DVDでの復活があったのか、あるいは今後DVD化されるのか定かではない。

この作品は1974年だったと思う。有楽町のスバル座で公開されたが2週間も公開されなかった。今では『ミッション・インポシブル』や『アンタッチャブル』の商業的成功で大物映画監督の仲間入りしたブライアン・デ・パルマの作品だ。日本ではこの『ファントム〜』のすぐ後に公開された『キャリー』がそこそこのヒットをはたし、ホラー映画監督として知名度を上げた。

『ファントム〜』の公開時の背景には「ロッキー・ホラー・ショー」などが先駆した「ロック・オペラ」という言葉がまだ使われていた。従ってこの映画も音楽を題材にした映画なので当然のように「ロック・オペラ」という言葉が宣伝活動に使われた。この映画が当たらなかった原因の一つに「ロック・オペラ」という言葉への拒否反応があったような気がする。

『ファントム〜』は音楽ビジネスを題材にした映画なのだが、悲しい愛の物語である。
音楽的な才能に恵まれながらも商業的才能が全くない世渡りベタの作曲家ウィンズロー(ウィリアム・フィンレイ)。彼が愛した無名のシンガー、フェニックス(ジェシカ・ハーパー『サスペリア』の主役)。音楽業界の巨大なるドンであり、金儲けのためには手段を選ばないスワン(ポール・ウィリアムス)。この3人が織りなす物語はあまりにも悲しいラブ・ストーリーだ。
この映画に関してはネタばれさせないほうが良いのでは、と思ってしまうあたりに私のこの映画に対する思い入れがあるのかもしれない。

主人公の3人に加えてこの映画にはなかなか面白いキャスティングやエピソードがある。音楽プロデューサー、スワンが手がけるミュージシャン、ジューシー・フルーツ。このバンドは映画後半でロック・バンドとして登場するがその時のコスチュームは顔を白と黒でペインティングしている。まるでロック・バンドKISSのようだが、KISSはこの当時まだデビューすらしていない。そして、ジューシー・フルーツという名前。古い世代の方はどこかで聞いたことがあるのではないだろうか。「ジェニーはご機嫌ななめ」をヒットさせたジューシー・フルーツはこの映画から名前を拝借したとプロデューサーの近田春夫が言っていた。そして映画の後半でスーパー・スターとして出てくるビーフはマッチョでオカマというキャラクターで相当キツイ。このビーフという名前も近田春夫は使っていたような気がする。
そしてビーフのデビュー・コンサート会場でスタンディングしながら手拍子している観客役のエキストラの中には、後に『ビッグ・ウェンズデー』でブレイクしたウィリアム・カットの姿が発見できたりもする。

そして、この映画の中で何よりも素晴らしいのはスワンことポール・ウィリアムスが手がける音楽だ。ポール・ウィリアムスはカーペンターズに歌わせた「愛のプレリュード」を始め、アメリカン・ポップス・シーンに数々のヒット曲を送り出した偉大なる作曲家だ。『ファントム〜』でもその才能はいかんなく発揮されてる。彼の曲なくしてこの映画は成り立たなかったといっても決して過言ではないだろう。
ストーリーが終わりエンド・ロールで主要登場人物が各シーンのスティル写真で紹介されるが、この時に流れるポール・ウィリアムス自身が歌う「THE HELL OF IT」とエンド・ロールの映像は何度見てもこみ上げてくるほど素晴らしい。

音楽エンタテイメント界のどろどろした裏側をポール・ウィリアムスの夢物語のような音楽とデ・パルマ監督らしいスピーディーな映画手法で見せる『ファントム・オブ・パラダイス』。どのような方法で今後見ることができるか分からないが、タイトルだけも気に留めておいていただきたい私のお薦めの1本だ。入手することは映像よりも困難であろうがサントラ盤も当然お薦めだ。
1974年作品。91分。


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