猟奇的な彼女 ネタばれ度:☆☆☆ 2003.9.20記

韓国映画というのが日本でヒットしているのかしていないのか実のところまったく分からない。韓国マニア達のサイトなどではヒットしているように書かれているが、実際に映画館で映画を見ようと思うと公開3週目ぐらいから上映している映画館を探すのに一苦労することが多い。
そして、韓国映画の予告での決まり文句。「あのシュリを超えた」「あのJSAを超えた」など過去の大作映画を興行収益などで上回ったというフレーズばかりだ。これが韓国マニア以外にどのぐらいアピールできるのかといつも不思議に思っている。ターゲットを間違えていないのか?と思ってしまうのである。日本に住む韓国マニアに発信すれば良いというものではないだろうと思うのである。

この『猟奇的な彼女』だが、これもまたターゲットを間違えてたのではないだろうか。猟奇的な・・・この言葉を目や耳にして韓国や韓国語に詳しくないいわゆる普通の人のほとんどはホラー映画?と思うだろう。実際、私の周りのほぼ全員はホラー映画だと思っていた。
韓国語での「猟奇的」とは日本語ではかなり古い表現だが「跳んでいる」「変わっている」とかいう感じだろうか。
配給会社は絶対に日本語題名をつけるべきだったのではないだろうか。原題のままの公開でずいぶん間口を狭くしてしまったように思える。

さて、映画だがこんなに面白い韓国映画にはそうそう出会えないかもしれない。『シュリ』『JSA』など朝鮮半島南北分断を扱った映画や『ペパーミント・キャンディー』など韓国の歴史に基づいての映画。どれもこれも重苦しい映画がばかり注目されてきたが、韓国の日常生活や街並みが登場するこの映画などのほうがずっと楽しめるように思える。
そして、大作といえない日常映画は日本映画よりも数段優れている。それらがなぜ面白いかというと韓国人と日本人の発想の違いからくるのではないだろうか。日本人は映画の組み立てについてあまりにも神経質になりすぎるのだろう。けっしてそれが悪いということではない。むしろ、普通であれば当たり前のことだから評価されるべきものだ。ただ、エンターテイメント映画を作る場合、もう少しハメを外しても良いのかなと思うのだ。
その点、韓国人はかなり大雑把に映画を捉えているようで多少の矛盾点など関係なし。この勢いが映画を面白くしているように思えるのだ。『猟奇的な彼女』もテンポがよく、細かい点でアレ?思うこともあるが、勢いがその疑問を上回るので最後まで楽しく見ることができる。韓国映画という枠を取り払っても面白い映画である。

猟奇的な彼女であるチョン ジヒョンはこの映画以前にも韓国エンタではブレイクしている子だったと思うが、この映画で完全に韓国若手女優の代表になったであろう。以前、映画『イルマーレ』でもその不思議な存在感をかもし出していたが、『猟奇的な彼女』でもいろいろな感情の起伏を見事に顔の表情だけで見せてくれる。ちなみに彼女の映画での役名は最後まで登場しない(たぶん)。
韓国は儒教の教えからか、日本に比べてまだまだ男尊女卑の社会であると認識している。だから映画の中の彼女のような女性は実際の韓国、それもソウルより地方ではまず見ることはできないのではないだろうか。大都市ソウルでも彼女のようなタイプはまずいないのだと思う。映画での彼女を見て韓国の若い男女がどのように思ったのか大変興味深い。
儒教の教えと言ったが、それがどのようなものなのかもよく分からない。お年寄りや目上の人を敬い大切にしようなどということもあるのだろう。映画の中でも電車で年配者に席を譲らない人を彼女が一喝するシーンもある。しかし、実際の韓国(ソウル)の街の中でバリアフリーなどという発想を見ることはまず難しい。乗り物で若者が積極的にお年寄りに席を譲っているが、実際のところは譲らないと年寄りが怒り出すからだとも聞いたことがある。不思議の国・韓国なのである。

『猟奇的な彼女』のもう一人の主人公が彼女のボーイフレンドであるキョヌを演じるチャ テヒョンだ。彼もこの映画以前にテレビドラマなどの出演は多く人気俳優だったが、この映画以降、人気もうなぎ登りとも聞いている。歌手としてもCDをリリースしていてそれなりにチャートをにぎわせていたが、ちょっと太目の体を駆使してのダンス・パフォーマンスは見ていて痛々しかったし寒々しかった。
チャ テヒョンはテレビドラマでもちょっと三枚目の役のほうが生き生きしていたが、この映画でのキョヌのちょっととぼけたお人よしキャラクターはピッタリだった。というよりも彼なくしてこの映画は存在しなかったのかもしれない。それほどのはまり役である。

この映画に限らず韓国映画であまり気合の入っていない映画、例えば『イルマーレ』や『リメンバー・ミー』『八月のクリスマス』などを見終わった後に共通しているのは、けっして号泣はしないが、鼻の頭がツンとするような泣きになることだ。
この感覚は大変心地よいものでなかなか出会えるものではない。見終わった後に幸せ感など感じてしまう・・・そんな映画が『猟奇的な彼女』である。

2003年公開。122分。監督:クァク チェヨン


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