シュリ ネタばれ度:★☆☆ 2000.02.05

韓国で1999年に空前の大ヒットとなった「シュリ」。監督は、カン ジェギュ。主演は「八月のクリスマス」のハン ソッキュ。「50年以上、政治家に騙された」、「餓死した自分の子の肉を喰う親の気持ち」などのセリフを始め、平和ボケした日本人が北朝鮮と韓国の問題を含んだこの映画を両国の人たちと同じ目で見ることは不可能です。
従って、ここでは1本の商業映画としてとりあげてみました。

角川映画の「人間の証明」の時のキャッチ・コピーに「読んでから見るか、見てから読むか」というのがありました。この「シュリ」も同名の小説が出版されているので、このキャッチがまず問題になってきます。
ところが「シュリ」に関して、本当に楽しむのであれば、読んでから見ることをお薦めすします。というのは、あまりにも登場人物の性格的な側面を映画は描ききれていないし、肝心な部分での人間関係は完全に欠落しているからです。映画を見終わった後に、映画の余韻を楽しもうとすると、それらの疑問に直面してしまいます。

更に、制作費が3億円ということですが、やはりこの低予算だと本格的なエンタテイメント映画を製作するには無理があるようです。
中盤、北朝鮮工作員が、見せしめのために爆破するデパートのシーンは、あまりにもしょぼく、目を覆いたくなるほどです。後半のクライマックスともいえるサッカー場でのシーンも予算のなさが如実に表れています。ユ ジュンウオンがスタジアムの通路を進んでいくのですが、サッカーの試合中のため観客はおおいに盛り上がっています。カメラが観客をバックにユ ジュンウオンを撮る時は、観客は盛り上がっていますが、カメラが観客側から試合をバックにユ ジュンウオンを撮る時は、試合は行なわれていません。きっと試合前やハーフ・タイムの時の撮影なのでしょう。ちょっと軒先を借ります、みたいな感じで。
このクライマックスのサッカー場のシーンを完全映画用にお金をかけられない段階で、この映画の製作はやめるべきではなかったのでしょうか。ここがセコイせいで、それまでの人間模様や緊張感がすべて水の泡になっています。もちろん、ラスト・シーンへのプロセスも陳腐なものでしかなくなってしまいました。
3億円しか集められなかったプロデューサーの手腕のなさ。そしてそれを請け負ってしまった監督のソロバン勘定のできなさ。これらが、せっかく素晴らしいストーリーを壊してしまいました。誤解がないように願いたいのですが、ストーリーはかなり面白いし、悲恋ものの映画としてはよくできていると思います。だからこそ可愛さ余って・・・という意味での感想です。

古くは、「ブラック・サンデー」「スター誕生」でのスタジアムの撮影。「ブラック・レイン」での大阪府警も真っ青になった大阪市内でのロケ。日本映画「誘拐」での東京街頭ロケぐらいの規模で作らなければ、この「シュリ」は映画として成立しないはずでした。
映画製作側の無謀さがただ残念なだけです。ただし、本を読んでから見る場合においては、それなりに楽しめないこともありません。

ちなみに、ネタばれとして、本と対比して、私が知人に説明した文があります。興味のある方は見て下さい。124分。


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