DESIRE / BOB DYLAN 2000.4.18記

若い頃、もっぱら聴いていた音楽はいわゆるハード・ロックを主体にしたものだったのでボブ・ディランの偉大さをいくら唱えられても全くピンと来ませんでした。「あ〜フォーク・ソングの人ね」という感じしかありませんでした。ボブ・ディランが好きだという人を見ても、歌詞も和訳を見て何を喜んでいるんだか、とこれまた、軽蔑ににも似た印象しか持てませんでしたし、その人に対する見方さえ変わってしまうほどでした。

そんな私が唯一評価し、お薦めできるのがこの「DESIRE(欲望)」というアルバムです。
75年に発表されたこのアルバムは、後に登場するアメリカン・ヒーロー、ブルース・スプリングスティーンの力強さとナイーブさを持ち合わせた力作といえます。
アルバムには9曲収録されていますが、1曲目の「ハリケーン」を聴くだけでも価値があります。この歌はミドル級のプロボクサー、ルービン・ハリケーン・カーターの殺人事件による冤罪事件のことを歌ったもので、ボブ・ディランのメッセージ色(怒り)のかなり強い歌詞と力強い歌い方とスカーレット・リヴェラのバイオリンの音色、エミルー・ハリスのバック・コーラスが緊張感を高めています。この緊張感は必聴です。
更に、「コーヒーをもう一杯」、実在したマフィアのジョーイー・ガロのことを歌った「ジョーイー」、妻のサラに愛をささげた「サラ」(結局この独白的な歌詞も実らず1年半後に離婚するのだが)などどの曲も私のようなディラン嫌いにも十分聴くことのできるものだし、それ以上に、もしかしてディランって良いのでは?とさえ思わせられてしまうほどの秀作です。

結局、私の場合、ディランについてはこのアルバムしか評価できなかったのですが、古いレコードを処分しようと思う時に、なぜか処分できない1枚になっています。
ボブ・ディラン嫌いの私がお薦めする貴重な一枚です。
秋口の真っ青な空か夕暮れ時にマッチするアルバムだと思います。とにかく1曲目の「ハリケーン」はぜひとも聴いてみてください。


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