ジプシー / 児島未散 2001.5.26記

「ヘタうま」という言葉がある。上手くはないけど味がある。という説明が一番良いのだろうか。「上手くはない」と言っているあたりに自分の思い入れが感じられる言葉でもある。できれば「ヘタ」とは言いたくない、という自分勝手な思い入れというか・・・。ローリング・ストーンズなどはこの「ヘタうま」の最高峰かもしれない。

児島未散もけっして歌が上手いわけではない。むしろ上手い、ヘタで分けるならヘタなほうなのかもしれない。しかし、雰囲気はじゅうぶんにありヘタというひと言で片づけることはできない。ある時はフランソワーズ・アルディのようでもあり、イ ジヨンのようでもあり、マリアンヌ・フェイスフルのようでもあり、ニコのようでもある。
彼女の歌声にはどの曲も水滴がついているようでドライな感じがしない。だからと言って決して暗いのでもない。彼女の歌の良さは雰囲気もそうだが、歌詞がはっきり耳に入ってくることもあげられる。これはとても大事なことであり難しいことでもある。歌声や歌いかたが耳にいってしまい、歌詞がすんなり入ってこないシンガーが多い中でとても貴重なことだといえる。サウンドの邪魔にもならず、歌詞の邪魔にもならず、しかも存在感を保つ歌いかた。これが児島未散の魅力といえるだろう。

この「ジプシー」というアルバムは1991年にリリースされた彼女にとって2枚目のアルバムだったと思う。と、あやふやなことしか言えないほど彼女のシンガーとしての歴史は短い。おそらくこのアルバムの後にもう一枚リリースして歌手活動はやめていると思う。
アルバムは全10曲でアルバム・タイトル曲の「ジプシー」はシングル・カットされチャートも上位に(10位以内)にランクされていたと思う。その時の1位は小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」だった、という時代背景だ。
「ジプシー」を始め比較的ミディアム・テンポの曲が多く、このテンポでこそ彼女の持ち味は発揮されていたと言えるだろう。

彼女は1967年生まれで俳優、宝田明の娘さんだ。ということは彼女のお母さんは1959年度のミス・ユニバース、児島明子だ。この2人の娘なので身長も168cmとスタイルもよい。容姿端麗ゆえに歌手という職業にもあまり執着心がなかったのかもしれない。しばらく表舞台から姿を消していた後、女優としてテレビで見かけることになる。「透明人間」「金八先生」に出演している。そしてその後はまた姿を消すことになる。少なくても私の知るかぎりでは。

人は偶然にも自分の実力以上の力を発揮してしまうことがある。彼女にとってもこの「ジプシー」は偶然の産物であり、明らかに自分の標準以上の出来になってしまったのだと思う。この偶然の産物がその後の彼女の生き方にどういう影響を与えたのか、今となってはその答えを自信を持って答えることはできない。ただ、このアルバムが「歌手」児島未散の存在を確実に残した名作であることは自信を持って言える。
このアルバムを入手することはかなり困難だろう。中古CDショップ、フリーマーケットで格安値段で売りに出ているのを見つけたなら、迷わずゲットすることをお薦めする。


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