特許権から見る知的所有権 2001.8.25記

2001年8月23日の朝日新聞朝刊トップの『特許権確認求め日亜提訴へ』『開発者の中村氏「正当な報酬を」』というタイトルが目をひいた。
内容としては「青色発光ダイオード(LED)」の開発者として世界的に知られる(私は知らなかった)カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の中村修二さんが、開発時に勤務していた日亜化学工業に対して青色LEDの特許の権利者は自分であることの確認と報酬として200億円の支払いを求める訴訟を起こした。というものだ。

日亜という会社は90年代初頭は年間売上げが200億円だったらしいが、この青色LED技術の開発により急に業績を伸ばし今年度の売上げは900億円を越すほどで、青色LEDが同社事業の柱になっているようだ。
中村さんは99年まで在職していたが、当初会社は中村さんの発明開発に対して反対をしていたらしいが、最終的に中村さんが退職するまでに会社として80種類ぐらいの特許を取得したらしい。

今回問題になるのは、特許は会社のものか、個人のものかというところだろう。
特許法では開発者個人の権利として保証する、と規定しているはずだ。従って、これが欧米であれば特許権は会社ではなく、個人のものということで何の問題もないはずだ。
ところが、日本の場合はそうはいかない。
会社にしてみれば、開発途中の社員(開発者)の生活の保障(給料など)もしているし、何よりも開発するにあたっての設備投資は会社が負担している。だから、職場で開発されたものの権利は当然会社に属する。という論理になってくる。実際、日本で会社が提出する特許申請は開発者は個人だが、申請者は会社というのがほとんどだと思う。

こういう日本独特の感覚は日本の知的所有権の認識という面では大きな課題になるだろう。この日本的な感覚をすぐに変えるのはかなり難しいことだと思う。
例えば、「あなたは何の仕事をしていますか?」と質問された時、日本人のほとんどの人は「私は、株式会社○○に勤めています」などとなるのではないだろうか。ところが、欧米では「私は、セールス・マネージャーを株式会社○○でしています」となると思う。
同様に、日本の会社人が自分の会社をグチる時など「ウチは、ダメだよなぁ」という言い方をすると思う。しかし、欧米では自分の会社でも「○○はダメだよなぁ」と客観的に社名を言うと思う。
これらの例が全てではないが、日本人は会社に所属するという感覚がベッタリだから会社のほうも今回の訴訟のように、給料払っているのだから当たり前。という感覚になるのはいたしかたないことなのかもしれない。

とはいうものの日本は韓国や中国、アジア諸国に比べるとだいぶ知的所有権については真剣に考えているようだ。今回の社員の発明開発に関しても大手企業では発明ボーナスや歩合を年間で上限1億円ほど設定している会社も出てきているとのことだ。
同様に個人の知的所有権に対する認識も以前に比べると向上をしているようだ。

知的所有権・・・この権利に関して明確な答えは一生出ないだろう。新しい事例が日々生まれてくるだろうし、あらゆる判例が出るとは思えないからだ。
そして一番の危惧は、知的所有権について勉強し知れば知るほど、行き詰まっていくことだ。逆に無関心な人たちは「得」をする可能性を秘めていることだ。

今回の中村さんによる特許権の訴訟は、日本の知的所有権の歴史の中で大きなターニング・ポイントとなる出来事になるのではないだろうか。

最後に、次のような場合、知的所有権という面から見るとどういうことが考えられるだろうか。

ある超大物芸能人をCMで起用(酒関係にでもしますか)することになった。出演条件のひとつに衣装に関しては本人が好きなものを着せることとある。
撮影当日、スタジオで頭を抱えているスタッフがいた。何だろうと思ってタレントを見てみると、タレントはミッキーマウスのトレーナーを着てカメラ前に立っていたのであった。
さて、どうなる?どうする?


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