私の中での南北首脳会談 2000.6.15記

朝鮮半島分断後、初めての両国首脳による会談が北朝鮮の平壌で行なわれた。当初の予定であった12日の前日にあたる11日に延期の申し入れが北朝鮮側から要請があったりして、うまくいくのか?実現されるのか?などの懸念もあったが結果的には、第1回目としては、離散家族問題、正常国交回復、更には統合に向かい大きな意味のある会談であったようだ。

私は、一般の人よりは韓国・朝鮮のことをよく知っていると思われているようだ。私がそう思われるぐらいだから一般レベルでの韓国・朝鮮に関する関心は著しく低いのだと思う。私は「知っている」のではなく「関心がある」だけなのだと思う。
そんな私にとっての首脳会談について書いておくことにした。

まず不思議だったことは、金大中大統領と金正日総書記の空港での握手の画が予想以上にインパクトがあったこと。
それがどうしてなのかが分からない。ドイツ統合の時もいいかげん分別のつく歳であったのにもかかわらず、それほど自分の中で波風がたたなかったのは遠いヨーロッパでの出来事だったからなのだろうか。今回は隣国、それに関心のある国だからインパクトがあったのだろうか。
「感動した」という言葉が日本のテレビのニュースでもキャスターの口からたくさん発しられていた。この「感動」というのも最近あてにならないもので、あまりにも軽んじて使用されているような気がする。サッカーの「芸術的」なシュート、などでつかう「芸術的」と同じように。
私たちの「感動」と在日韓国・朝鮮人の方との「感動」とはあまりにもかけ離れが大きいような気がするので私は恐れ多くて「感動」という言葉は使えない。

ただ、なぜか知らないが両首脳が握手した瞬間に鼻の奥がキュッとつまり、涙腺にきたことだけは事実である。そして何よりも私の涙腺を刺激したのは、金大中大統領であった。大統領はたぶん相当お足が悪いのであろう。O脚気味の脚を引きずるようにゆっくりと歩かれる姿に、日本での拉致事件なども含めてこの日が実現するまで歩んでこられたご苦労がオーバーラップしてしまった。
歴史的といわれるこの日のこの瞬間を体験、実現された大統領の気持ちを考えるのと、お歳を召されたな、と感じざるをえないお顔を見ると胸が締め付けられる思いだった。

金正日総書記は役者だなと印象が一番強い。聞けば映画にとても関心があり自らも制作もしているという。今回のセレモニーも自らのシナリオなのではないかと思うほど緩急をつけたストーリーであった。誰も空港に出向かいに来るなど予想すらしていなかったであろう。金大中大統領が気づかないようなしぐさをしていたのも無理もないことだろう。この時の大統領の「やっと来たか」というように感慨深げに空港周辺の景色を見回す姿も良かった。
で、金正日総書記だが、彼の表情は韓国及び世界の国々用のものだったのではと思う。韓国からの経済援助を含めて思惑のある彼の立場としては、まずは韓国国民に好かれなくては意味がない。いくらトップ同士で援助の話が締結しても韓国国民の感情抜きでは真の成功とは言えないであろうから。
実際、韓国国民の彼に対する印象もだいぶ変わったようなので成功したといえるだろう。
彼の演出は、二人で同じ車に乗る。市内走行中に途中で女性が車を停めて大統領夫妻に花束を渡すなどまことに細やかである。まるで延期した前日に通しリハーサルをやったのではないかと思ってしまうほど完璧なものであった。
総書記は映像にお詳しいというからあるいはテレビのカット割も考えて動いていたのかもしれない。実際、北朝鮮のテレビでは総書記がタラップ下の位置から大統領を出迎えるシーンとかはカットされていたとも聞いている。まさか編集まではご自身でやっていないと思うが、そうとう演出力のある方だと思われる。

テレビといえば日本のテレビのニュースでもトップ扱いでとりあげていたが、各局とも翻訳字幕が違っていたので一つのテレビ局しか見ていない人はだいぶ感じ方も違ったかもしれない。
金正日総書記の話で各国から隠遁生活をしている、と言われていることへのコメントで局によっては「欧米諸国からは隠遁生活〜」「マスコミから隠遁〜」「敵・・・いやぁ外国から〜」などもあったし、韓国のテレビを見ていたというくだりでは、「韓国にいる離散家族や逃亡者も〜」「〜亡命者〜」「〜脱北の人〜」などと訳はまちまちであった。私自身も訳ナシでは何も分からないので改めて翻訳の難しさと重大さを再認識させられてしまった。

いずれにしろ初会談にしては両首脳により署名まで実現したのだから大成功といえるのだろう。この成功により在韓米軍の問題も含めて両国の周辺諸国の位置付けも大きく変わってくるだろう。
日本もうかうかしていられない。8月15日を目標に南北両国の離散家族の対面が進めらるようだし、更にこの日は南北親善サッカーの試合もあるとも聞いている。思いのほか統合も早く実現するかもしれない。
日本のニュース・キャスターは「感動しました」とニコニコ顔でニュースを締めくくっていたが、朝鮮半島が分断された理由をもう一度ちゃんと考える必要が出てきたことを実感させられる歴史的な3日間だった。


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